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[「必当☆予想人」新春特別編]

2020年1月22日
暮れも押し迫ってくると、江戸の町は景気のいい餅つきの音で賑やかになる。店先で正月の松飾りを作る職人の姿にも、門松を売り歩く百姓の姿にも、年の瀬の慌しさが感じられる。

商人よろずやのでーぶは、一年の総決算とあって、あちこちで掛け取り(取り立て)に走り回っている。帳面に記載しての掛売りが多いのだ。

払う方も金の工面に忙しく必死であった。きちんと清算して、気分よく正月を迎えたいものである。だがなかには、どうもやりくりできず、言い逃ればかり言う手合いもいた。

赤福長屋のぷり衛門は、寄せ来る掛け取りを追っ払うのに、今年は死んだふりをした。香典を持ってきた大家さんに、いくらなんでもこれは受け取れないと女房のぴん子は断る。押し問答の末、たまりかねたぷり衛門は、棺おけから手を出して「えーから、もらっとけ」。大家さんは「ヒエッ!」とぶったまげて、縁側から転げ落ち、中風を患ってしまったそうだ。

「ゴーーン!ゴーーン!ゴーーン!」
大晦日の夜、除夜の鐘が鳴り響く。四苦八苦(4×9+8×9=108)を取り払うということで、鐘は108回つくと言われている。でーぶは、年越しそばをすすって腹ごしらえをすると、また江戸中を駆けずり回った。

正月二日の夜見る夢を初夢といった。「一富士二鷹三茄子」と、富士山の夢がいちばんよいとされている。吉夢を祈って、寝る前枕の下に「宝船の絵」を敷く。この二日の日は、「お宝、お宝〜♪」と大声で町なかを行く宝船売りも、あちこち見かけた。

「長き夜の 遠の睡りの 皆目醒め 波乗り船の 音の良きかな」
(『なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな』とは、和歌の一首。この歌は最初から読んでも逆から読んでも同じ音になる「回文歌」である)

浮世絵師のゴロは、この「宝船の絵」を描いて今のところ懐が温かく、球はじき(ぱちんこ)に通い詰めである。

『門松は七日の朝までに取り除くべし』とのお触書が出されて以来、元旦から六日までを松の内という。松の内は来客が多いので、裏店のかみさん連中までお化粧をして着飾る。見違えるほどに美しくなった女房を、まじまじと見て、髪結いのパラ親分は、ちょっぴり惚れた気分に浸るのだった。

七日は、春の七草と餅を入れた七草粥を食べ、その年の無病息災を祈る。囃文句(はやしもんく)を唱えながら、請負人の新生菜は、その草を叩き細かくして粥に入れた。いい匂いの湯気が顔をつつんで消える。腹をすかした愛猫ちびも匂いにつられ足元にまとわりついてくる。

「ニャ〜オ♪」とちびが催促すると、「グゥ〜グゥ〜」と新生菜の腹の虫も催促を始めた。

正月十六日は斎日(さいにち)と言って、あちこちの寺院にある閻魔様(えんまさま)の縁日である。またこの日は春の藪入(やぶいり)といい、丁稚奉公人たちの休暇日でもあった。遊び盛りなので、親元へのあいさつもそこそこに、仲間と連れ立って盛り場へと繰り込むのである。

尻掛け酒屋で飲み食いした帰りに、占い師の黒闇天女は、十数年ぶりに「お姉さんいくつ?お茶しない?」と声をかけられ、心の臓が子うさぎのように、ぴょこんぴょこんとはねた。

黒い丸めがねを外して近づいて来やがったので、「う、うちは四十路(よそじ)で…、石川殿が好きやねん」と言って煙草に火をつけると、そそくさと逃げていった。

(どうやら、垂れ目でちとすけべったらしい不細工な若者だったらしい)

丁稚奉公人たちは、思い切り羽をのばして春の藪入が終わると、次の七月十六日、秋の藪入を待ち遠しく思うのであった。

占い長屋に戻った黒闇天女は、めしたき釜のようなどっしりとした尻を下ろすと、はと麦焼酎にお湯をそそぎ、抹茶まんじゅうにかぶりついた。

「うちもまだまだもてるやん、今宵は石川殿が夢の中に現れはって、きゃ!そんなお戯れをなんて………」妄想をふくらまし、はと麦焼酎を飲み干すともうひとつまんじゅうに手を伸ばした。

──おしまい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今回のおすすめN3は、第5350回終了現在、第5299回より51回出現なしの3けたプラス[11]狙いで10点継続。

[056] [083] [092] [182] [263]
[524] [641] [722] [731] [740]


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2020年1月22日
暮れも押し迫ってくると、江戸の町は景気のいい餅つきの音で賑やかになる。店先で正月の松飾りを作る職人の姿にも、門松を売り歩く百姓の姿にも、年の瀬の慌しさが感じられる。

商人よろずやのでーぶは、一年の総決算とあって、あちこちで掛け取り(取り立て)に走り回っている。帳面に記載しての掛売りが多いのだ。

払う方も金の工面に忙しく必死であった。きちんと清算して、気分よく正月を迎えたいものである。だがなかには、どうもやりくりできず、言い逃ればかり言う手合いもいた。

赤福長屋のぷり衛門は、寄せ来る掛け取りを追っ払うのに、今年は死んだふりをした。香典を持ってきた大家さんに、いくらなんでもこれは受け取れないと女房のぴん子は断る。押し問答の末、たまりかねたぷり衛門は、棺おけから手を出して「えーから、もらっとけ」。大家さんは「ヒエッ!」とぶったまげて、縁側から転げ落ち、中風を患ってしまったそうだ。

「ゴーーン!ゴーーン!ゴーーン!」
大晦日の夜、除夜の鐘が鳴り響く。四苦八苦(4×9+8×9=108)を取り払うということで、鐘は108回つくと言われている。でーぶは、年越しそばをすすって腹ごしらえをすると、また江戸中を駆けずり回った。

正月二日の夜見る夢を初夢といった。「一富士二鷹三茄子」と、富士山の夢がいちばんよいとされている。吉夢を祈って、寝る前枕の下に「宝船の絵」を敷く。この二日の日は、「お宝、お宝〜♪」と大声で町なかを行く宝船売りも、あちこち見かけた。

「長き夜の 遠の睡りの 皆目醒め 波乗り船の 音の良きかな」
(『なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな』とは、和歌の一首。この歌は最初から読んでも逆から読んでも同じ音になる「回文歌」である)

浮世絵師のゴロは、この「宝船の絵」を描いて今のところ懐が温かく、球はじき(ぱちんこ)に通い詰めである。

『門松は七日の朝までに取り除くべし』とのお触書が出されて以来、元旦から六日までを松の内という。松の内は来客が多いので、裏店のかみさん連中までお化粧をして着飾る。見違えるほどに美しくなった女房を、まじまじと見て、髪結いのパラ親分は、ちょっぴり惚れた気分に浸るのだった。

七日は、春の七草と餅を入れた七草粥を食べ、その年の無病息災を祈る。囃文句(はやしもんく)を唱えながら、請負人の新生菜は、その草を叩き細かくして粥に入れた。いい匂いの湯気が顔をつつんで消える。腹をすかした愛猫ちびも匂いにつられ足元にまとわりついてくる。

「ニャ〜オ♪」とちびが催促すると、「グゥ〜グゥ〜」と新生菜の腹の虫も催促を始めた。

正月十六日は斎日(さいにち)と言って、あちこちの寺院にある閻魔様(えんまさま)の縁日である。またこの日は春の藪入(やぶいり)といい、丁稚奉公人たちの休暇日でもあった。遊び盛りなので、親元へのあいさつもそこそこに、仲間と連れ立って盛り場へと繰り込むのである。

尻掛け酒屋で飲み食いした帰りに、占い師の黒闇天女は、十数年ぶりに「お姉さんいくつ?お茶しない?」と声をかけられ、心の臓が子うさぎのように、ぴょこんぴょこんとはねた。

黒い丸めがねを外して近づいて来やがったので、「う、うちは四十路(よそじ)で…、石川殿が好きやねん」と言って煙草に火をつけると、そそくさと逃げていった。

(どうやら、垂れ目でちとすけべったらしい不細工な若者だったらしい)

丁稚奉公人たちは、思い切り羽をのばして春の藪入が終わると、次の七月十六日、秋の藪入を待ち遠しく思うのであった。

占い長屋に戻った黒闇天女は、めしたき釜のようなどっしりとした尻を下ろすと、はと麦焼酎にお湯をそそぎ、抹茶まんじゅうにかぶりついた。

「うちもまだまだもてるやん、今宵は石川殿が夢の中に現れはって、きゃ!そんなお戯れをなんて………」妄想をふくらまし、はと麦焼酎を飲み干すともうひとつまんじゅうに手を伸ばした。

──おしまい。
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今回のおすすめN3は、第5350回終了現在、第5299回より51回出現なしの3けたプラス[11]狙いで10点継続。

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